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日本に迫る「空き家問題」〜未来への備え方とは?

空き家

【目次】

現在の空き家問題の実態と背景

日本における空き家率の推移と現状

 日本の空き家問題は年々深刻化しています。2013年の総務省調査では、全国の空き家数は約820万戸に達し、全住宅の約7戸に1戸が空き家となっていました。その後10年間でこの数はさらに増加しています。2023年10月時点では、空き家数は899万戸、空き家率は13.8%に達し、過去5年間で50万戸が増加しました。

 特に問題視されているのは放置された「その他」の空き家で、2013年時点では約318万戸にのぼります。これらの空き家は管理されず、倒壊や火災、不法侵入などさまざまな危険を引き起こすリスクがあります。さらに、2033年には空き家数が2,150万戸に達し、全住宅の約3戸に1戸が空き家になるという予測もあります。この状況は、特に地方に大きな影響を与えています。

空き家増加の主要因とは?

 空き家の増加には、大きく分けて2つの主要因があります。まず一つ目は、高齢化社会の進行によるものです。高齢者が高齢者施設や子供の家に移り住むことで、元々住んでいた住宅が空き家となるケースが増えています。また、相続に伴う問題も原因の一つです。相続を受けた後に住宅を活用する意思や能力がない場合、管理されないまま放置される空き家が多いのが現実です。

 二つ目に、所有者の管理能力や活用意識の不足です。一部の空き家は、売却や賃貸に出すことができる状態にあるにもかかわらず、手続きや必要な費用が負担となることで放置されがちです。その結果、景観の悪化などの問題が発生しており、社会的な課題として注目されています。

都市部と地方で異なる空き家問題の特性

 都市部と地方では、空き家問題が抱える特性に違いがあります。都市部では主に新しい住宅の供給が続く一方で、古い住宅が空き家となるケースが増えています。特に、都心部から少し離れた地域では、住宅の更新が進まないため、老朽化したままの空き家が目立っています。

 一方、地方では人口減少が進んでいるため、空き家数の増加が顕著です。少子高齢化に加え、若年層が都市部へ移住するケースが多いため、地方では住む人がいなくなった家屋が残される傾向があります。その結果、インフラの維持や地域活性化に課題を抱えるケースが多くなっています。

空き家が引き起こす社会的影響

 空き家問題が進行することで、さまざまな社会的影響が懸念されています。まず、景観の悪化や不衛生な状態が近隣住民に悪影響を及ぼします。また、放置された空き家が犯罪の温床となったり、不法侵入の場となる問題も指摘されています。

 さらに、空き家が増加すれば地域全体の活力が低下し、結果的にその地域の不動産価値が低下します。こうした地域の衰退は、住民の暮らしに悪影響をもたらし、引いては地域の持続可能性を損なう可能性があります。

2030年問題とは?中長期での予測される影響

 2030年問題とは、空き家率が30%に達するという予測に基づく概念です。これは、住宅の3戸に1戸が空き家になるという深刻な事態を指しています。特に人口減少や高齢化が進む日本社会では、空き家の増加が避けられない状況にあります。

 過去の予測では2030年までにこの状況が現実化するとされていましたが、近年の調査ではその達成時期が若干後ろ倒しに修正されています。それでも、中長期的に見ると空き家問題は深刻化し続ける見込みです。放置された空き家が地域社会や経済に与える影響を早期に食い止めるためには、対策の重要性がますます高まっています。

空き家問題がもたらすリスク

景観や治安への悪影響

 空き家問題がもたらすリスクの一つが景観や治安への悪影響です。管理が行き届かない空き家は劣化が進み、外観が破損したり草木が伸び放題になることで地域の美観を損ないます。その結果、住民の居住満足度が低下し、周辺地域全体の活力が失われていきます。また、放置された空き家は不法侵入や犯罪の温床になりやすく、防犯面でのリスクが高まります。特に都市部ではこうした空き家の治安上の問題が重要視される傾向にあります。

建物倒壊や火災リスクの拡大

 適切に管理されていない空き家は、老朽化が進行しやすく、それに伴い建物の倒壊リスクが高まる危険性があります。地震や台風といった自然災害の際には、この危険性がさらに増大します。また、空き家は管理不全による電気配線の劣化やゴミの放置などが原因となり、火災が発生するケースも考えられます。これらのリスクは周辺住民にも直接的な被害を及ぼすため、迅速な対応が求められています。

放置空き家が引き起こす不動産価値の低下

 空き家の放置は、不動産市場においても悪影響を及ぼします。一つの空き家が地域全体の印象を損ねることで、周辺の住宅や土地の価値が下がるという現象が起こります。特に「その他」の管理されない空き家が集中的に増加する地域では、不動産価値の低下が顕著に現れます。このような状況は経済的な損失も含み、家や土地を売りたくても適正価格での取引が難しくなる問題につながっています。

適切に管理されない場合の近隣トラブル

 適切に管理されていない空き家は近隣住民とのトラブルを引き起こす原因にもなります。たとえば、空き家の庭が放置されることで雑草や害虫が発生し、隣接する住宅の住環境に影響を及ぼします。また、倒壊の恐れがある空き家が隣家に危害を与える可能性もあります。このような問題は管理の責任が所有者にある場合が多いものの、所有者が特定できないケースでは解決が難航することも少なくありません。

環境や衛生上の負担増

 空き家は環境や衛生上の問題を引き起こす要因にもなり得ます。ゴミや廃材が放置されたり、老朽化により建築材が飛散することで、周囲の住環境が悪化します。また、放置された空き家は害獣や害虫の温床となりやすく、住民の健康被害を引き起こす恐れもあります。このような環境面での負担が増加することで、地域全体の維持管理コストが上昇し、さらなる問題が波及する可能性があります。

解決に向けた取り組みと政策の現状

空き家対策特別措置法とその影響

 日本の空き家問題に対処するため、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。この法律は、放置された空き家を適切に管理させるために、市区町村が特定空家に対して指導や措置を行う権限を持つことを目的としています。2023年にはこの法律が改正され、除却や修繕などの管理強化が図られました。この改正により、管理不全の空き家に対する行政の介入が容易になり、周辺環境や安全性の向上に寄与しています。

自治体による条例や新しい施策の展開

 空き家問題への取り組みは各自治体ごとに進められており、それぞれの地域課題に応じて独自の条例や施策が展開されています。例えば、一部の自治体では空き家所有者に適正な活用や管理を促すために補助金を支給する仕組みが導入されています。また、空き家活用に特化した相談窓口を設置し、所有者と潜在的活用者をつなぐマッチングサービスを提供している事例もあります。このような施策は、空き家の有効利用を促進し、地域活性化にもつながっています。

民間で進む空き家活用の成功事例

 民間の取り組みとして、空き家をリノベーションしてシェアハウスやカフェ、地域住民向けの集会施設に転用する事例が増加しています。特に地方では、古民家を活用した観光施設や宿泊施設が成功している例も多く見られます。これらの取り組みは、空き家問題の解決のみならず、地域の経済活性化や新たな雇用機会の創出にもつながっています。このような成功例から、民間の知恵や資金を活用した空き家活用の可能性が注目を集めています。

新技術やインフラを活用した管理の効率化

 IoT技術やリモート監視システムを利用した空き家の管理が進展しています。センサーやカメラを活用し、空き家の状態をリアルタイムで把握することで、適切なタイミングでメンテナンスを行うことが可能となっています。また、ドローンによる外観検査やAIを活用した劣化状況の診断など、新たな技術的アプローチが導入されています。これらの技術の進展により、管理コストや負担を減らしつつ、より効果的な空き家管理が実現されています。

住民意識改革の重要性

 空き家問題の解決には、法律や技術的な対策だけでなく、普段からの住民意識の向上が不可欠です。多くの空き家は所有者が管理責任を果たしていないため、放置されているケースが多く見られます。このような現状を打破するには、空き家の適切な管理や利活用が地域社会全体の利益につながるという認識を浸透させる取り組みが必要です。また、相続時の空き家活用への関心を高めるためのセミナーや情報提供の場を設けることも効果的です。住民一人ひとりが問題を他人事ではなく自身の課題として捉えることが、持続可能な社会の構築につながります。

未来に向けた空き家問題の解決策

空き家活用による地域活性化の具体例

 空き家を積極的に活用することで、地域の活性化を実現する成功例が数多くあります。例えば、多くの自治体が空き家をカフェや観光施設としてリノベーションし、その地域を訪れる人々を増やす取り組みが注目されています。また、地方の空き家を利用して、移住者の住まいとして提供する仕組みも成果を上げており、移住促進と過疎化対策の双方に寄与しています。これらの具体的事例は、空き家問題が地域再生の資源ともなり得る可能性を示しています。

高齢者や若者のライフスタイルに適応した住宅政策

 高齢者や若者に合わせた住宅政策の導入も、空き家問題解決への鍵です。高齢化が進む中、段差の少ないバリアフリー住宅や小規模で管理しやすい住宅の需要が増えています。一方で、若者向けにはシェアハウスやワーケーションができる空間としての再利用が注目されています。こうした政策は、空き家の需要を喚起し、住宅としての循環を促す効果が期待されます。

相続時の負担軽減と空き家の流通促進策

 相続時に発生する諸問題を解消することも重要です。例えば、相続税負担を軽減するための特別措置や、空き家の買取制度を整備することは、所有者が空き家を放置しないインセンティブとして機能します。さらに、不動産市場での流通を活性化させることで、空き家の管理負担が適切に引き継がれ、社会的資源としての利活用が進むでしょう。

空き家を循環させる不動産市場の可能性

 空き家問題解決には、不動産市場の更なる柔軟性と多様性が必要です。例えば、不動産業界が空き家の査定基準を明確化することで、売買や賃貸のスムーズな流通を促すことができます。また、リノベーション済み物件として市場に出す仕組みや、投資対象としての魅力を高めるスキームは、空き家の新しい価値創出につながります。不動産市場が活性化すれば、空き家問題は循環型の解決へと向かう可能性があります。

持続可能な住宅政策の展望

 長期的視点に基づいた持続可能な住宅政策の構築が、未来を見据えた空き家問題解決には不可欠です。新築住宅の供給を抑えつつ、既存の住宅ストックを活用する政策は、空き家増加の抑制に役立つと考えられます。さらに、住宅のエネルギー効率を向上させる環境配慮型リノベーションを推進することは、空き家問題だけでなく、環境問題にもアプローチすることができます。このように、多方面からの連携が住宅政策の大前提となるでしょう。

市民が取るべき対策と未来への備え方

個人でできる空き家の管理方法

 空き家問題を防ぐには、所有する物件を適切に管理することが重要です。建物の清掃や定期的な点検をはじめ、庭木の剪定や周辺環境の美化などが基本的な対策となります。特に長期間不在になる場合は、専門の管理サービスを利用して、維持管理に努めると良いでしょう。また、建物の状況を記録しておくことで、修繕が必要な箇所の把握や売却時の説明に役立ちます。

信頼できる専門機関やサービスの活用

 空き家の適切な管理には、専門機関やサービスの活用も効果的です。空き家管理を専門とした業者や地域密着型の不動産会社に依頼することで、プロフェッショナルな視点での点検・管理が可能になります。また、「空き家バンク」など地方自治体が運営する仕組みを利用すれば、空き家を新しい住人に貸し出したり売却したりするためのサポートも受けられます。信頼できる機関を選び、持続的な管理を実現しましょう。

共同体として取り組む地域再生の可能性

 空き家問題は個人だけでなく、地域全体で取り組むことが求められます。例えば、町内会や自治会などで空き家情報を共有し、地域活性化につなげる方法があります。空き家を地域の拠点施設やシェアハウス、あるいは新しい事業の場として活用することで、地域の活性化につながる可能性があります。住民同士の協力により、空き家問題を解決しながら地域の魅力を高める取り組みが重要です。

知識を深め、問題を認識する機会作り

 空き家問題への取り組みには、各市民が問題への理解を深めることが第一歩です。地域で開催される空き家セミナーや講演会に参加することで、正しい知識を身につけることができます。また、自治体や専門機関が発行するパンフレットやウェブサイトで情報を収集するのも効果的です。問題を認識し自分の状況に合わせた行動を取ることが未来への備えにつながります。

未来へ向けた所有と活用の考え方

 空き家問題を解決するためには、所有不動産をどのように活用するべきかを再考する必要があります。家の相続時に、所有を続けるか売却や貸し出しを検討することが重要です。また、適切な相続計画を立てることで、将来の負担を軽減しやすくなります。さらに、空き家を活用して地域に貢献する方法を見出すことで、自身の資産価値を最大限に高めながら日本全体の空き家問題解決に寄与することも可能です。

この記事の執筆者

このブログの担当者 
  辻本 武司

◇阿南市在住 業界歴11年

◇保有資格:宅地建物取引士・FP2級

特に阿南市周辺の不動産売却・買取・リフォーム・リノベーションはお任せください!
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